銀座小十
「銀座小十」
日本を代表する和食調理人、奥田透氏のヘッドショップ。
7年連続ミシュラン三ツ星獲得という偉業を達成。
テーマは、「数寄屋でありながら、古いしきたりに縛られない空間」
数寄屋造りを否定してはいないが、「現代の日本、特に東京においては、江戸時代の数寄屋はストイックすぎるのではないか」との提案をさせていただいたところ、奥田氏にも共感いただき、伝統を継承しつつ、現代日本の生活パターンに反しない、東京における数寄屋造りを試みました。
「千利休が今今生にいたならば、どう表現しただろう」それが始まりでした。
伝統を守りながらも最小限不都合を排除し、ヴィジュアルをデフォルメせず、ディティール等の工夫により、グローバルに対応できる空間とシステムを構築しました。
大将奥田氏は、常にサイズにこだわります。
サイズというのは・・・
大将とお客様の距離。対象とお客様の目線の高さ&角度。お客様とホールスタッフの距離(椅子後部の広さなど)包丁を引くときのカウンターの高さ。
そして、私と奥田氏とのサイズ(距離)。
これらが1mm狂えば、1週間後には台無しになる。
それが分かっているから、サイズにはシビアです。
おかげで私は、奥田氏のサイズを知る唯一の設計者となることができました。
長いお付き合いになりますが、私の諦めない姿勢を買ってくださっているとのことです。
そういえば「できない」と言ったことがない気がします。
私ひとりではできなくても、クライアントと常に共に考えれば、必ず解決する思っています。
そんな想いを共有していただいたのだと思います。
2010年夏からプランニングをしていました。10年末には、ほぼまとまっていました。
ところが、11年年頭、奥田氏は一流和食店をプロデュースすることになりました。そして私が8ヶ月掛けて練り上げたプランを使いたいというのです。
それはそれでかまわないのですが、来年改装の「新装銀座小十」のプランはどうするのかと、私はとまどいました。
そんな私に奥田氏は「いや、これ以上のものを考えてくれればいいだけのことじゃないですか。」と言うのです。
そして私は奮起させてもらうことができ、最高の設計をさせていただくことができました。
私のモチベーションを高めるすべを知っている唯一の人のようです。
「杉山さんは、私のすべてがわかっている。」
そう言われること以上の喜びはありません。
おかげで「OKUDA Paris」も設計させていただきました。
毎回9割がた任せていただけているというのは、プレッシャーではありますが、設計者冥利に尽きます。
1.クライアントを知る
2.消費者を知る
3.同業者を意識しない
このあたりに感銘いただいたようです。
カウンター席
木曽桧一枚板無節。価格は言えませんが、もう二度と手に入らないかもしれないほどの逸品。
カウンターの高さに、クライアントの接客のこだわりが見えます。
天井は、駆け込み&光天井。
玄関
ビルインの限られたスペースの中で、必要とされたのは空間の繋がり。
欄間のバランス、ガラスの使い分けにより、解消できました。
つくばい。
つくばいから漏れた水は、奥の水庭を潤してゆく。
機能(目的)と伝統(素材と色とディティール)を守り、伝統と現実を調和させた作品です。
小上がり和室の入り口
直線的に部屋に入るのでは、期待感を増幅することができない。
それは、入室後の顧客満足度に繋がる。
(室内が完成されていることが前提)
で、手摺欄干を設けることにより余分な2アクションを起こさせることで、期待感を高めさせる という狙い。
手摺の梅抜き模様は、それを避けて通ることが当然なことと思わせるマジック。
和室個室
掘りごたつ式であること以外は一般的に見えるが、実はあらゆる工夫が施してある。
数寄屋ではあるが、伝統に反しない範囲でアレンジを施している。
ハーフ龕割床+蹴込床は、狭い空間の中で、やり過ぎにならないための工夫。
人工照明を意識させたくないなかで全体照度を保つには、光天井が効果的。
テーブル席2
洋室・・・ではなくて、椅子テーブルの部屋。
洋館をイメージすることで、数寄屋の時代背景とマッチさせている。
花台は室床だったり、換気口のカバーは梅模様だったり、伝統の手法を用いている。
化粧室1
木瓜模様に彫り込んだ御影石と松と竹で構成した洗面カウンター。
化粧室2
猪ノ目模様に彫り込んだ御影石のカウンター。
テーブル席1からの水庭の眺め。